yubune

⽔のなかで

ー循環の観察、そのなかで⽣きる⼈との対話ー

 

私たちはしばしば、土壌、標高、気候といった地上の微妙な違いによって、作物の味が変わるといったことを耳にします。さらに、この土地で作物を生産者する方々は、水がより深い感覚を刺激してくれると言います。空気中に漂う湿気ですら、内臓を心地良くくすぐってくれる、と。循環していく季節、それを観察するのと同時に地元の人たちと会い、話を聴くことで、この土地が独特な繊細さをもっていることに気づかされます。

 

針江のんきぃふぁーむ

ー綺麗なところにしかない梅花藻ー

比良山と琵琶湖に挟まれた針江地区という小さな集落には「かばた」と呼ばれる水源があります。まず新鮮な山の湧水は壺池に流れ込み、収穫した農産物を洗い流すのに利用されたり、夏野菜を漬け鮮度を保つために用いられています。絶え間なく水は流れ、壺池の先には端池があり、そこでは鯉が飼育され、その鯉たちは藻や様々な有機物と共に水を綺麗に保ってくれます。
かばたの⽔は、稲を植える畑にも⾏き届いています。⽯津⼤輔さんが営んでいる針江のんきぃふぁーむの畑もそのひとつです。彼の⽔⽥では⿃や⾍たちがいきいきと暮らし、⽔位が⾼くなり畑から⽔が溢れるくらいになると、ビワマスが産卵をしに訪れることもあります。⽣物たちのそういった活動は、天然肥料にもなる副産物、恩恵を残し、授けてくれるのです。

 

⽯津さんが家業だった稲作を継いだのは、彼が30歳だった時のこと。以来、針江のんきぃふぁーむでは、伝統的な⽅法に基づくシングルオリジンのお⽶の⽣産を追求し続けるのと同時に、新しい品種の開発も取り組まれています。ある時、福⽥屋の主である⼀樹が⽯津さんのお⽶を⾷べた際、⼀気にその味に魅了され、それから福⽥屋の⾷事で提供するようになりました。⼣⾷では⽢味が少なく柔らかで優しい伝統的な品種のお⽶、朝⾷では新しい⼀⽇の活⼒となるよう⾹りが⾼い現代的な品種のものが、シンプルな副⾷と共に提供されています。

 

大與
ー伝統と⾷卓の空気を守る蝋燭ー

⾔わずもがな、“ ご飯 ”はどの⾷卓においても愛されています。しかし、お⽶を使った蝋燭については知る⼈ぞ知る存在となっているかもしれません。お⽶の蝋燭は⽇本では古くからあり、ハゼノキのワックスと合わせて作られます。ハゼノキは主に四国や九州といった温暖な地域に⽣えているものですが、お⽶の蝋燭の需要減少が災いし、⽊の個体数と収穫する⼈の数が段々と減ってきています。

1914 年に創業した和ろうそく⼀筋の⽼舗である⼤與は、注意深く吟味された臭いの出ないお⽶と⽶ぬかを使い、伝統を守り続けている数少ない貴重な存在です。市場に並んでいる臭いがないと“されている”キャンドルの多くは⽯油を主成分としています。ただ、そういったものを実際に使ってみると、⿐の奥を刺す独特な臭いが漂ってきます。⼀⽅、単⼀素材で作られている⼤與の蝋燭は実に微かなので、⾷事の場の空気を壊したりはしません。作られている背景や原材料のことを知っておくと、蝋燭の上で揺れ動く⽕がより美しく煌めいて⾒えます。

 

農家みなくちファーム
ー信頼が作り出す美味しさー

年間に約100種類、このマキノの土壌に合った野菜を育てているみなくちファーム。春は新玉葱。夏はとうもろこしや今津の伝統野菜であるマクワウリ。秋は原木椎茸。冬は大根をはじめとする根菜類など。地元の人たちに健康的で美味しい野菜を食べて欲しいという気持ちをもちながら、みなくちファームは色々な野菜作りに日々、試行錯誤しています。マキノには獣たちが住む山、里、そして畑があります。里は獣と人間の境界線となっていて、その管理を怠るとやがて木々が絶え、里は荒れ、獣が畑に入ってきてしまうそうです。「木を切り、次に木が育つまでの期間はおよそ12年。そのサイクルを守ることが、獣と人間が同じ地を共有しながら暮らすためには不可欠なのです」。そう、みなくちファームを営む、水口淳さんは話してくれました。「 原動力となっているのは、とにかく今の仕事が好きだからという点に尽きるんですよ。好きという気持ちを保てれば、環境をより良くするための手入れは一切、苦ではなくなります 」

“ 美味しい ”の元には、生産者に対する信頼があるはずです。あの人が作ってるから、きっと大丈夫なはずだと思う気持ち。物自体ではなく、想いこそが味を形成します。おじいちゃん、おばあちゃんが育ててくれた野菜がとびきり美味しかったという思い出をもっている人は少なくないでしょう。その味の記憶は信頼と、さらには深い愛情から来ているのかもしれません。

今日も欠かさず、真心が込められた野菜が福田屋へと届けられます。

 

滋賀県の地元生産者の方々と出会い、直接の取引を行うことで、水への理解を深める事ができ、またそれを維持する為の生態系にも気づく事が出来ます。田畑を耕し手入れを行う人、家業の漁業を継ぐ方、伝統的な蝋燭製作方法を忠実に守り作る者、形は違えど地元の生産者さん達は自然環境に配慮し、美しい自然を伝統と共に後世に残すことを意識しているように見受けられます。

農家(米): 針江のんきぃふぁーむ
http://nonkifarm.com/

和蝋燭:大與
https://warousokudaiyo.com/

農家(野菜):みなくちファーム
https://minakuchi-farm.shop/

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